海外視察報告2(フランス,ラ・アーグ再処理工場) [秘書便り]
1月20日、パリから300km、高速鉄道で片道3時間の行程を経て、ラ・アーグ再処理工場(※1)を訪問した。
(※1)第二次世界大戦の激戦地だったノルマンディー地方にある。
ラ・アーグ再処理工場は、海抜180m、300ヘクタールの広大な土地に立地している。福島原発事故発生時にも活躍したアレバ社(AREVA)が運営しており、フランス国内の原子力発電所から発生する使用済核燃料の再処理を請け負う第2工場(UP2)群と、海外の原子力発電所から発生する使用済核燃料の再処理を請け負う第3工場(UP3)群とで構成される【図1】。
このうち我々は主にUP3を視察した。使用済み核燃料の受け入れ・荷降し設備、貯蔵プール、中央制御室など、見てまわった個々の施設【図2】は、昨年10月に視察した青森県六ケ所村にある日本原燃の核燃料再処理施設と酷似していた。それもそのはず、六ケ所村の施設はアレバ社の技術支援により設立されているからだ。
1990年に操業を開始したUP3は、一見して新しい施設とは言いがたい【図3】。とはいえアレバの担当者によれば、廃棄物の圧縮比率、品質の安定性、工場内リサイクルの徹底等、目に見えないところでの技術進歩があるのだとのこと。ちなみにアレバ社の売上高研究開発費率は約9%。一般的な企業と比べても比較的高いと言えるだろう。
ちなみに六ケ所村での核燃料再処理施設は、ガラス固化プロセスがボトルネックとなっており、まだ本格稼働のメドが立っていない。前日に視察したフィンランドやアメリカなどが採用している「直接処分」方式と、我が国やフランスなどが採用している「再処理」方式の良し悪しについてアレバの担当者に聞いてみたところ、最終的に処分する核廃棄物の分量を大幅に減らすことができ、かつ、ガラス固化により核廃棄物の安定化を数万年規模で保障することのできる「再処理」方式の方が優れているとの意見を得た。我が国の議論では、直接処分と再処理のそれぞれに要するコストの観点が強調されることが多いが、これも一つの見方であろう。
フィンランドでの視察と同様に、福島原発事故がフランスの原子力政策や国民感情に対して与えた影響はどうなのか、との質問を行ったところ、自然災害に対する安全対策をよりいっそう高めるきっかけにはなったものの、今後も原子力発電を続けていくという大筋の方向性は変わらないだろう、との意見を得た。
その経緯で伺った意見が印象に残った。
「原子力発電には必ずリスクがともなう。そのリスクにどう対処していくかを考えることが重要である。スリーマイル、チェルノブイリ、そしてフクシマでの経験は、我々の安全対策に十分に活かされている。」
「国民に、原子力発電のリスクをきちんと理解してもらうことも重要だ。ここラ・アーグでは、周辺住民の参加を得る形で大規模な訓練を定期的に行っているし、フクシマ後は住民への説明によりいっそう力を入れている。」
原子力発電には危険がともなうという考え方に基づき、安全対策やコミュニケーションに取り組んできたという点は、我が国とは大きく異なっている(※2)。
(※2)週刊文春2月2日号、152~3ページに、フランス政府関係者の同趣旨のコメントが紹介されています。
(文責:政策秘書 高崎)