海外視察報告1(フィンランド,オンカロ最終処分場) [秘書便り]
1月19日、フィンランドの首都ヘルシンキから西へ240km先にある原子力発電廃棄物の最終処分場予定地「オンカロ」(ONKALO。フィンランド語で「隠し場所」の意味)を訪問した。
原子力発電を続けるにせよ、やめるにせよ、発電により生じた廃棄物を最終的にどこに・どのように処分するかは、我が国だけでなく、各国に共通した課題である(※1)。現時点で、最終処分場建設のメドが立っているのはフィンランドとスウェーデンの2か国のみである。
(※1)ちょうど1月23日付朝日新聞朝刊2面に、ドイツにおける最終処分場を巡る問題が取り上げられている。
オンカロは、フィンランドで原子力発電を行っている電力事業者2社の共同出資により設立されたポシヴァ社(POSIVA)が、オルキルオト原子力発電所に隣接するエリアで開発している。最初に担当者による説明【図1】を受け、PRセンターで最終処分場の全体像を概観した後に、全長6kmのトンネルを車で移動し、地下420m地点にあるデモ用サブトンネル【図2】に入った。
地質学的に見て非常に安定している岩盤の奥深くまで穴を掘り、廃棄物を封入した後はできる限り自然に帰すという考え方に基づいており、使用しているコンクリート等の資機材は自然と調和するものを使っているとのことだった。そこには、科学的な意義もさることながら、自然に対する畏怖と敬意とが感じられた。
フィンランドでは、我が国やフランスのように使用済み核燃料を再処理するのではなく、そのままの形で埋設する「直接処分」の形をとる。長さ4mの燃料棒を、鋼鉄製の容器にそのまま入れて密封し、さらにその容器を、腐食に強い銅製5cm厚の容器に入れて密封する。これを「核燃料廃棄物格納キャニスタ」と言う【図3】
(※2) 化学、土木分野で広く用いられている粘土鉱物の一種。海底・湖底に堆積した火山岩や溶岩が
変質してできる。
ちなみに我々が訪問した2日前、フィンランドの放射線・原子力安全局(STUK)が、福島原発事故によって大気中に拡散したセシウムが、フィンランド国内の森林やトナカイからも検出されたことを発表した。この話をきっかけに、福島原発事故がフィンランドの原子力政策や国民感情に対して与えた影響はどうなのか、との質問を行ったところ、STUKしかりPOSIVAしかり、これまでにも国民に対して原子力発電によって生じるリスクをきちんと説明した上で、原子力発電の必要生を主張してきており、国民の信頼性はいまだに高いままだと説明していた【図5】。確かに、フィンランドでは福島原子力発電所事故以降も、原子力発電所建設計画はそのままの形で進められている。この背景には、ロシアへのエネルギー依存度をできる限り下げたいという政府の意向もあるのであろうか。
現在、オンカロは「研究施設」の位置づけであり、今年2012年中に政府に計画書を申請、認可された後に「最終処分場」となるとのことである。技術的にクリアしなければならない大きな課題はほぼ解決できており、現在、膨大な数のリスクシナリオを想定して机上シュミレーションを繰り返しているとのことである。
(文責:政策秘書 高崎)