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10/2 本会議質問全文 [▲国会質疑▲]

10/2 参議院本会議にて、総理所信演説に関する代表質問をおこないました。

質問の全文は以下の通りです。今回は質問時間が25分と今までより長いため、長文ですが全文を掲載いたします。本文の最後には動画がございます。
(元原稿のため、本会議における発言とは差異がございます)


《ここから本文》

 維新の党の寺田典城でございます。会派を代表して質問いたします。
 総理は、経済成長を成し遂げ、強い日本を取り戻すために、日々並々ならぬ緊張感をもって努力されていると思います。総理のまるで「青年の主張」のような若々しい演説を拝聴し「これが一国の総理の言葉なのか」と思いました。一読いたしますと景気の良い言葉がそれこそ桃源郷に咲き乱れる花々のように踊っております。しかし、この国の将来のために何をするか具体的な事はあまり述べられておりません。

●財政健全化と消費税
 地方の実情は、桃源郷どころか生きていくのが精いっぱいな状態であります。総理は「「経済最優先」で政権運営に当たっていく」と述べられましたが、今優先すべき課題は経済だけではなく、一千兆円近い借金を重ねてしまった財政の健全化も必要でしょう。
 維新の党は、景気の先行きに暗雲が立ち込めるなか、国会議員自らが身を切る改革もせず、歳出削減の努力が見られない現状では、消費税増税には反対であります。
 2002年に小泉内閣が提示した三位一体改革では、国庫補助金改革・税源移譲による地方分権の推進と、地方交付税の削減による財政健全化で、地方自治体も含めたプライマリーバランスの黒字化を目指すということで、地方も同時並行的に平成の合併を進めるなど、必死になって取り組んだ結果、2007年度にはプライマリーバランスがマイナス5.5兆円、対名目GDP比マイナス1.1%にまで縮小しました。しかし、その後2008年のリーマンショックを迎え、財政規律が崩れたまま、今日まで来てしまいました。
 安倍政権では、国土強靭化を筆頭にバラマキばかりが目につきます。来年度概算要求では社会保障費の増加分を超えて、歳出が拡大する見込みになっています。消費税の増税は本来増える社会保障費を賄うためだったはずです。与党の多数の力でもって、世論を無視して消費税を8%から10%に引き上げたとして、増収分はどのように使われるのでしょうか。
 消費税の増税分の使途について、総理にお伺いいたします。

 私は時々登山に行きます。山は登りよりも下りの方が危険で事故も多いのです。登る時は自分の体力に合わせて進めば良いですが、下りは足元をよく見て、背負った荷物と落ちていこうとする体をコントロールしながら下りなければ命にかかわります。
 総務委員会で何度も提言して取り上げてもらったことに、地方公共団体の公共施設などの除却があります。平成の合併を経て、市町村は重複した施設を抱えることになりました。財政が苦しく、老朽化して使用目的を果たした施設を除却したくてもできない所には、起債を認めて、持ち過ぎた資産を減らす後押しをしてはどうかと提言し、前回の通常国会で地方交付税法等の一部を改正する法律の中に組み込まれました。
 「日本を取り戻す」と叫んでみても、高度成長期のような、ひたすらに頂上を目指して成長する時代ではなくなってしまいました。坂を登り切り、下り坂もある時代に入ったのです。今必要なのは、上を見る成長戦略ばかりではなく、慎重に足元の財政を見ることです。国も地方も背負い過ぎてしまったムダな荷物を見直し、辛抱する事、知恵を絞って工夫する事で、財政破綻を回避して、身の丈に合った、安心して暮らせる社会の実現を目指す一方で、新しい切り口で発展を模索していくことではないでしょうか。
 総理、2020年度にプライマリーバランスの黒字化目標が達成できますか、日本の財政の足元は大丈夫ですか。財政健全化について、総理のお考えをお伺いします。

●地方創生
 総理は、今国会を地方の創生に向けたスタートと述べられました。地方分権が叫ばれてから20年も経っても、一向に進む気配がありません。このたびの地方創生の動きが、一時的なブームで終わらず、地方がその個性を生かして生き残っていける、確たるものになることを願っております。今度こそ、国と地方が役割分担し、自立して、互いに発展していける道筋が作られると信じております。
地方創生についての、総理の具体的なビジョンをお聞かせください。
 地方創生のなかで、鳥取県大山の地ビールや、島根県海士町のさざえカレーが挙がりました。ふるさと名物で町おこし。地域がそれぞれの地の利を生かし、工夫してチャレンジすることは大いに結構であります。しかし過去にも、一村一品運動、B級グルメから派生したB-1グランプリ、農水省主催の農山漁村の郷土料理百選など、様々な取り組みがあり、ひとつの成功例をモデルケースにして、安易に飛びつく事例が繰り返され、多くの失敗が積み重ねられてきました。都市部での販路拡大のための催事に出店してみたり、アンテナショップを作ってみたり、第三セクターの会社を作って商品化してみたものの売れずに借金だけが残って清算したところも少なくありません。全国各地で、同じような試みをしては共倒れを繰り返してきたことも事実であります。
 石破担当大臣には、今まで失敗が繰り返されてきたようなやり方とは違う、新しい形を作り出してくださることを大いに期待しております。具体的な地方創生の手法をお聞かせください。

●災害対策と復興
 今年も広島など、各地で豪雨による災害が相次ぎました。つい先日は、御嶽山が噴火し、新たな土砂災害が起こる心配もあります。亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被害に遭われた皆様には心よりお見舞いを申し上げます。
 日本は災害の多い国であり、国民が安全・安心に生活を送るための防災対策は必要であります。だからと言って、国土強靭化による過大なインフラ整備を正当化することを認める訳にはまいりません。巨大なインフラと言えば、今建設中の東日本大震災の巨大防潮堤が引き合いに出されますが、20年前に北海道南西沖地震で大津波の被害に遭って、防潮堤を整備した奥尻島は、命を守ることを優先に人の住んでいる所に防潮堤を整備し、他は海浜を残しました。海を糧にして暮らす島民にとって、生業(なりわい)の維持もまた大事だからであります。それでも、昨年訪れてみると、せっかく整備した防潮堤の所に建つ民家には廃屋が目立ちました。
 岩手と宮城での災害公営住宅建設事業が8割以上進捗していることは、待ち望んだ被災者にとっては喜ばしいことです。陸前高田市をはじめとした三陸各地で大掛かりな土地のかさ上げや高台移転が進んでいます。しかし、これらの復興事業は果たして身の丈に合ったものでしょうか。震災から既に3年半が経過しました。この間に被災者・被災地の状況は変化しています。仕事を求めて都市部に移動する被災者も少なくありません。人口減少は着実に進んでいます。将来的に持て余す結果になることは、奥尻島の例からも明らかであります。当初計画を見直し、将来にわたって維持できる規模に見直すことは無いのでしょうか。巨費を投じて作った宅地や災害公営住宅が、空き地や空き家だらけにならないと言い切れますか。
 竹下復興大臣に伺います。復興計画の見直しをするつもりはございませんか。

 総理は、2020年のオリンピック・パラリンピックで聖火ランナーが復興なった被災地を駆け抜ける姿を世界に発信したいと述べられました。このまま見直すことなく建設が続けば、民家も、沿道で手を振る人もまばらで、海の見えないコンクリートの壁が延々と続く景色を世界に発信することになりかねません。海外では、その光景をどのように受け止めるでしょうか。
 総理の、復興に対する総括的なお考えをお聞かせください。

●教育とイノベーション

 今まで国と地方のかかわりは、霞ヶ関の官僚が書いた『全国一律・金太郎飴方式』の上意下達で、地方の自由度は殆どありませんでした。市長・知事時代を通じて、制度の壁と何度も闘ってきました。
 知事時代の2004年には、今までの日本にはなかった大学を作ろうと、国際教養大学を設立しました。1年間の留学義務付け、TOEFLで600点クリアが卒業の条件であります。4年で卒業できる学生は約半数で、残りの学生は5年くらいかけて卒業していきます。
 この大学を設立しようとした時には、多くの人が失敗すると考え、反対の声も多く、知事選の争点にまでなった大学であります。しかしその大学は設立して10年で、先月末に文部科学省が発表したスーパーグローバル大学の37校のひとつに選ばれました。国際教養大学は、日本的・ガラパゴス的な既存の大学に対するイノベーションであると同時に地方からのチャレンジでもありました。
 また、全国に先駆けて幼保一元化や30人学級を実現し、全国学力テストで長年最下位レベルだった秋田県は、今やトップクラスの常連になりました。過去に誰もやってこなかったことを実行し、成果を上げ、新たなスタンダードを生み出すのもイノベーションではないでしょうか。
 総理は、「能力あふれる外国人の皆さんに、日本で活躍してもらえる環境を整備します。多様な価値に対応した公教育を可能にしてまいります」と述べられました。私は以前から、高校生には、できるだけ1年間の留学を勧め、国際感覚を持たせたら、この国はもっと変わると言ってきました。残念ながら知事時代にはそこまで実現することはできませんでした。
 政府は5月に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを視野に、東京圏を世界で一番ビジネスのしやすい都市にするとして、国家戦略特区に指定しました。しかし、日本的な閉鎖性を持つ商慣習を変えなければ、海外の企業はなかなか日本には来たがらないでしょう。若い彼らの多くが日本とは異なる文化を身につけ、受け入れるようになれば、新しい成長モデルが生まれ、10年20年先の日本は、それこそ総理が描いているような、世界で一番ビジネスのしやすい都市が実現するかもしれません。
 総理の考えるイノベーション、公教育の姿はどのようなものか、お考えをお聞かせください。

●女性が輝く社会・子育て
 「女性が輝く社会」の中に、真に改革すべきは社会の意識そのものとあります。例えば、少子化時代の今、なかなか社会的には認められない学生結婚を社会が認めるような意識改革も必要ではないでしょうか。もし子供が授かった学生がいたら、大学が単位取得や休学・復学の配慮や就職支援をする。若いうちに子供を産んで育てれば、20代後半には、子どももある程度手がかからなくなります。大学のキャンパスに実習や職員向けの幼稚園・保育所がある大学はあります。これからは学生向けにも認定こども園などが開設されて、授業の合間や帰り道には学生の両親に手を引かれてキャンパスを歩く子どもの姿が見られる。そんな大学があっても良いのではないかと思います。
 企業でも同じような取り組みはできるはずです。先ず、出産子育てをして、その経験を生かしてキャリア形成をして、仕事に打ち込んでもらう。それくらいの長い目で人材を育てるような改革をしなければ、晩婚化と少子化の傾向はなかなか収まらず、女性が活躍しやすい社会は訪れないと思います。
 有村担当大臣にお伺いします。産・学・官を縦断して、女性が活躍できる社会を実現できるかお聞きします。

●自衛権・特定秘密保護法・国民保護法の関係
 武力攻撃事態などにおける国民の保護のための措置に関する法律、いわゆる国民保護法が成立した2004年に、知事として自衛権の問題について考えたことがあります。また、県の危機管理として、アメリカと我が国の周辺諸国との間で戦争になり、警察権や海上保安権を越えた武力を持った人間が、船に乗って秋田県沿岸に上陸するかもしれない、とまで想定したこともありました。国民保護法では、こういった場合、都道府県知事は第15条1項の規定に基づき、防衛大臣に対して自衛隊出動要請をすることになります。
 7月1日の閣議決定に従えば、自衛隊がこの船を攻撃する必要があると判断した場合、領海に入る前に沈没させれば集団的自衛権、領海内なら個別的自衛権の行使、と整理できるのでしょう。しかし、当時の県の現場では、机上の整理ではなく、県民の生命・身体・財産を保護する責任を負う県知事として、取るべき行動は何かを必死に考えました。
 「集団的自衛権を行使できるようになった」「普通の国になった」と吹聴して周辺諸国を刺激するよりも、実際に問題が起きた時、どのように対処するかシミュレーションしておく方がよほど実践的と考えますが、総理のお考えをお聞かせください。

 また、昨年の特定秘密の保護に関する法律の審議では、テロリズムの防止に関する情報について、県警本部長と都道府県知事の間での事前の情報共有ができず、住民への避難指示や誘導に支障をきたすおそれがある事を指摘しました。
 先程の事例でお伺いします。政府は、武装した人間が乗った船が日本に向っているという情報を入手していたが、直前まで都道府県知事に伝達ができず、対処が間に合わなかったために住民に死傷者が出た場合は誰が責任を負うことになるのでしょうか。また、政府が情報を入手していたことは特定秘密として扱われ、闇の中に葬り去られてしまうのではないでしょうか。
 自衛権と特定秘密保護法と国民保護法の関係について、総理のご見解をお聞かせ願います。

●核燃料サイクルと最終処分
 原子力政策についてお伺いします。福島第一原発事故は未だ収束が見えておりません。急性期が過ぎ、小康状態を保っているだけであります。あれほどの取り返しのつかない人災を起こし、その解決もできていないのに、政府は半ば強引に原発を再稼働させようとしています。
 日本の原子力政策は「トイレなきマンション」と言われ続けながら進んできました。しかし、最終処分をどうするのかも決めずに、原子力の利用を続けることは国民の目を欺いているとしか言いようがありません。
 昨年小泉元総理が訪れて話題になった、フィンランドのオンカロ最終処分場予定地に、私は2012年1月、直接地層処分の実体を学びに、個人的に視察してきました。日本の国会議員では初めての訪問だと言われました。同じ足で、フランスのラ・アーグ再処理工場にもまわりました。
 フィンランドは、国と国民が地球温暖化のリスクとエネルギーの自立を保つために、その危険を承知の上で原子力というエネルギーを選択しました。オンカロの位置する地層は、過去18億年に遡って動いた形跡のない安定した地盤であります。世界有数の地震・火山国である日本には、残念ながら、それほど長い間安定している地盤はありません。
 フランスのラ・アーグ再処理工場は、ご存知の通り、青森の六ケ所再処理工場のモデルになっている施設であります。そこで原子力発電の危険性について伺ったところ、「原子力発電には必ずリスクが伴う。国民にもそのリスクをきちんと理解してもらうことも重要だ。」と明確な答えが返ってきました。地元の同意も避難計画も不十分なのに、何が何でも「安全」と強弁し、強引に再稼働を進めようとする日本の原子力政策とは大きく異なります。
 では国内ではどうなっているのかと、地層処分については北海道の幌延深地層研究センターに、核燃料サイクルと再処理については、福井県敦賀市にあるもんじゅと青森県六ケ所再処理工場を視察して参りました。どちらも稼働には程遠く、未だ道半ばでしかありません。原発の再稼働を進めるというのなら、先ず最終処分をどうするのかと、その場所を決めるべきではないでしょうか。
 小渕経済産業大臣に伺います。もんじゅや六ヶ所村再処理工場の核燃料サイクル事業の道筋をどうするおつもりですか。併せて、核燃料の最終処分についてのお考えをお聞かせください。
 それから、オンカロとラ・アーグには是非足を運んでみてください。

●最後に
 冒頭、若々しい青年の主張のような総理の所信演説と申し上げました。日本各地の前向きな話が散りばめられております。しかし、その中に登場した、福島県広野町に輝く稲穂、宮城県東松島で農業に取り組む安部さん、海士町のさざえカレーを作り出した若者、根室のサンマ…どれを取っても、それぞれの方々が地域に根差して、知恵を絞り、汗を流して独力で勝ち取ったものであり、総理の政策・実績とは何の関係もない内容ばかりであります。総理の所信というものは、国民に対し、この会期中に何をしたいのか、何をするのか、それを具体的に述べ、国の道筋、将来を示すものだと思います。
 今臨時国会が昨年の臨時国会のような、数に頼んで押し切ることなく、国民のために議論が尽くされ、実のある会期になることを願いまして、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

《本文終わり》


質問の様子はこちらからどうぞ↓↓
Youtube「寺田典城(てらたすけしろ)」チャンネル


タグ:本会議

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