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遊・学3000 ~時と豊かに暮らす~ [■ブログ■]

 今から15年前の話になる。秋田県知事になって3年目だった当時、県の新たな総合計画を策定するにあたり、この先どういう視点で進めるのかについて、考えに考えた結果、『「時と豊かに暮らす秋田」を目指して』と題した「あきた21総合計画」を作った。

 策定当時は平成11年(1999年)。21世紀を目の前にして、東西冷戦が終結し、情報通信システムが飛躍的に進歩したことで世界経済が大競争時代に突入した頃で、国際社会のなかでグローバル化に対応することが求められた時期だった。

 総合計画の中心に据えたテーマが『遊・学3000』だった。1年間を時間に直すと8760時間になる。そのうちから、睡眠や食事などの基礎的な時間と学業や労働などの時間を除いた、個人が自由に使える時間は年間3000時間ある。その3000時間という自由時間を学んだり、遊んだり、家族と過ごしたり、ボランティア活動をしたり…各人がいかに工夫し、充実した使い方をするかによって、その後の人生の満足感が違ってくるのではないかと考えた。そして、人生に充実する県民が増えれば、新たな価値観や新しい可能性を見出し、秋田が豊かになるのではないかと考えて提案した。

 しかし、県議会からは「ふざけている」「この不景気に、遊びなどとんでもない」「一体これは何なのか?」等々…非常に厳しい指摘を受けた。バブルが崩壊し、「失われた10年」と言われる平成不況の真っ只中では、「自由時間を活用して、遊んで、学んで、人生を充実させよう」と言っても、「ふざけるな」と言われるのは仕方のないことだったかもしれない。

  このことに限らず、子育て支援税等の政策でも、考え方が世の中の人より10年ほど先走るうえに、説明の言葉足らずで、なかなか県議会の理解を得られなかった私を、現在、消費者庁長官である板東久美子副知事(当時)が秋田を去る時に、「寺田典城という人物像を見ると、あの人に賛成する人もしっかり理解していないようだし、反対する人はなおさら理解していないようだからもう少し見てみたかった」と評してくれた。言い得て妙な一言だ。

 あれから15年。この『遊・学3000』のように、自分の時間を上手に活用することは、仕事に取り組む意欲を高め、文化の向上にもつながり、ひいては日本の活力の源になると思う。地方創生だ、国土強靭化だと、予算をバラ撒いて、将来世代に借金を付けまわすことよりも、一人一人の国民が、時間にゆとりを持ち、人生を豊かに生きることが、この国に新しい発展をもたらすことにつながると思う。

 「女性が輝く日本」と「地方創生」は安倍内閣の目玉のようだが、労働人口の4割近くの人が非正規雇用で、仕事が不安定で賃金が低い現状では、先ずは所得格差を解消する制度の創設と、会社や仕事に一辺倒に従属させられる働き方・生き方から、個々人が時間のゆとりを持てる生き方へと、企業と働く人の意識を変えていくことが必要だ。そのなかでも、真っ先に変わらなければならないのは旧態依然とした国会の在り方だ。

  ここにきてようやく、9月末に国は長時間労働削減推進本部を立ち上げ、過重労働の撲滅や休暇取得の促進等に目を向け始めた。元来、日本人は勤勉な性格で、ひたすら働くことを何よりも良しとする雰囲気があるが、これをキッカケに、人々の意識が変わり、今までとは違う、新しい価値観が生まれ、安定と成長がもたらさせるものと期待している。

 


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