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■191cmとスモッグ■ [■ブログ■]

 私の事務所に研修に来ていた身長191cmの大学生が北京大学に一年間留学すると旅立ったのが昨年の8月末。

 送別の時、「それ以上大きくなったら中国のバレーボールチームからスカウトされて帰国できなくなるんじゃないか?」と笑って門出を祝った。

 彼の勉強の成果と成長ぶりを見ながら、中国の高等教育事情を勉強するために、7月初旬の二泊三日で、北京大学や、日本の文部科学省にあたる中国教育部を訪問してきた。

 北京に到着すると、人、人、人・・・。天安門広場もどこもかしこも人でいっぱいだった。

 競争社会の国・中国は、中学から高校、高校から大学と段階的な競争でふるいにかけられる。日本には、失敗しても再挑戦できる仕組みがまだ残っている(?)が、中国では競争に負けた者はなかなか敗者復活ができない厳しい社会だ。選び抜かれて北京大学に入った人たち全員に、大学は在学中に外国留学するよう勧めている。この凄まじい競争社会が、今の中国の発展と成長を支える原動力だろう。

 彼はこのたび、留学期間が終わり、無事日本に帰国した。そしてこの夏休みにはアメリカに短期留学すると言っていた。あのノッポのボウヤが、日本的なのどかさと、彼独特ののんびり感を失わず、中国で揉まれて鍛えられ、身長ばかりでなく、人間的にも一回り大きく成長した様子を見て嬉しかった。

 さて、たかだか二日間の中国・北京滞在であったが、晴れていてもスモッグのために建物は霞み、ホテルの部屋からは景色を見ることもできなかった。鼻には、独特の空気がツン! と来る。子どもたちはおろか、大人ですらも屋外でスポーツは出来ないと言う。ひと昔前の中国は、天安門広場を埋め尽くすほどの自転車で知られたが、今やそのほとんどが車に変わった。

 40年から50年ほど前の日本は高度経済成長の真っただ中にあって、産業とモータリゼーションの急激な発展の陰で、都市部や工業地帯を中心に、ぜんそくなどの公害問題に悩まされ、今でもその後遺症に苦しんでおられる人たちがいる。

 中国の状況はちょうどあの頃の日本と重なる。今の日本は環境規制が厳しくなり、空気、河川、地下水など環境を汚染した企業は社会から淘汰される時代である。21世紀は「環境の世紀」と言われ、20世紀が地球に負荷をかけてきたことに対する償いの世紀と位置付けられているなかで、中国はこの環境問題をどう治めていくのか心配になった。

 爆発的な人口増加に歯止めをかけるための“一人っ子政策”をしてもなお、生存競争の激しい、格差の国・中国。それに対して、少子高齢化と人口減少に悩み、バブル崩壊後20年、経済成長が止まり、近代化の限界に達した国・日本。

 世界的競争社会の今、中国のように、急成長する勢いのある国々を相手に日本が生き残っていくには、子育てと教育、国際社会に対応できる人材育成が急務だ。国民一人一人の努力と協力を仰ぎながら、少子高齢化・人口減少社会でも安心して暮らしていける新たな社会を構築する必要がある。政治が先頭に立って実現していかなければならない課題であり、一刻の猶予も無い。それなのに現実は・・・いつ解散するの解散しないのと、今日も綱引きばかりしている。


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